10月、また値上げの波が来る
10月、食卓にまた値上げの波が来る。帝国データバンクの調査によれば、2026年10月は食品主要195社で約2,720品目が値上げの対象になる見通しだという。前年の10月に続き、単月で3,000品目に迫る規模だ。
アイダホ産ジャガイモ、輸入解禁への手続きが動いている
同じタイミングで、もう一つのニュースが動いている。アメリカ産の生食用ジャガイモ――いわゆるアイダホ産を含む生鮮ばれいしょの輸入解禁だ。日本はこれまで、病害虫の国内侵入を防ぐという植物防疫上の理由から、生食用の生鮮ジャガイモの輸入を原則禁止してきた。ところが2026年8月、農林水産省は防疫協議が必要な病害虫21種のリスト案を公表し、9月には説明会を開くところまで手続きが進んだ。背景には、アメリカ側からの長年の市場開放要求と、トランプ政権への対応カードとしての政治的思惑もあると報じられている。
「安くなる」で終わる話ではない
もし解禁されれば、店頭価格は3~4割ほど安くなる可能性があるという試算もある。短期的には家計にとって朗報に聞こえるかもしれない。だが、北海道はジャガイモの国内最大産地であり、JA北海道中央会は「断じて容認できない」と反対を表明している。安価な輸入品が市場を席巻すれば、国内農家の収益は圧迫され、作付け縮小や離農が進みかねない。そして一度失われた生産基盤は、簡単には戻らない。
食料自給は、それ自体が国防である
これは単発のニュースではない。日本の食料自給率(カロリーベースで4割に満たない水準が続いている)を、政府はこれまでも様々な形で――輸入自由化、種苗の外部依存、農業従事者の高齢化を放置する政策など――じわじわと下げる方向へ舵を切り続けてきた。東京大学の鈴木宣弘教授がかねてから指摘してきたのは、食料自給率の低下は「安ければいい」で済む話ではなく、有事の際に国民の命を他国に握られるということだ。防衛費をいくら積み増しても、食べ物が輸入に依存していては、国防は成り立たない。食料自給は、それ自体が国防なのである。
値上げのたびに家計を切り詰めることに疲れを感じている人も多いだろう。だが、その怒りの矛先を「高いから安い輸入品を」だけに向けてしまうと、私たちは自らの手で食の基盤をさらに手放すことになる。
一畝のじゃがいもから始まる転換
ここで、ダーチャ的な暮らし方が持つ意味が見えてくる。自分の手でジャガイモを一畝でも育てること、家族の食卓の一部でも自給すること。それは規模としては国全体の自給率を動かすものではないかもしれない。しかし、「食べ物は誰かが安く運んでくれるもの」という感覚から、「食べ物は自分たちで作れるし、作る責任がある」という感覚への転換は、確実に起きる。ジャガイモは初心者でも育てやすく、保存も利き、まさにダーチャ生活の入り口にふさわしい作物だ。
種芋を選ぶという、静かな抵抗
10月の値上げ通知を見てため息をつくその手で、来年の春に向けてジャガイモの種芋を選んでみる。それは、値上げに対する一番静かで、一番確実な抵抗の形かもしれない。
※この記事は、帝国データバンクの食品主要195社を対象とした価格改定動向調査、および農林水産省が公表した生鮮ばれいしょ(生食用ジャガイモ)の輸入解禁に関する資料をもとに構成した。
