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DAY 2行政法

【行政法】DAY2|法律による行政の原理と一般原則を会社に例えて理解する

行政活動は法律に従わなければならない。3つの原則と信義則・比例原則など一般原則を会社に例えてスッキリ理解する。

今日のテーマ

行政活動はなぜ自由にできないのか?そのルールの骨格が「法律による行政の原理」だ。


法律による行政の原理とは?

会社に例えると、「社員は会社の規則に従って仕事をしなければならない」というルールだ。

行政版では「国や地方公共団体は、国民の代表である国会が作った法律に従って活動しなければならない」となる。

これを法律による行政の原理という。

この原理には3つの原則が含まれる。

原則内容会社で言うと
法律の法規創造力の原則国民の権利義務を左右するルールは法律でしか作れない就業規則は会社が勝手に変えられない
法律の優位の原則法律と行政活動が衝突したら法律が勝つ社長命令より法律が優先
法律の留保の原則行政活動には事前に法律の根拠が必要規則にない仕事は勝手にできない

法律の留保の原則:どこまで必要?

「全部の行政活動に法律の根拠が必要か?」については争いがある。

通説(侵害留保説)はこう言う。

  • 国民の権利を制限したり、義務を課す行為 → 法律の根拠が必要
  • そうでない行為(サービス提供など) → 法律の根拠は不要

【判例】ヨット係留杭撤去事件(最判平成3年3月8日) 町長が緊急事態のためやむを得ずヨット係留用の鉄杭を撤去したことは、法律の根拠がなく違法。しかし撤去費用を支出したこと自体は民法720条(緊急避難)に照らして違法とは言えない。

ポイント:法律の根拠なき行政活動は違法。ただし緊急避難は別。


その他の一般原則

法律による行政の原理のほかにも、行政活動に適用される原則がある。

原則内容会社で言うと
信義誠実の原則(信義則)国民の信頼を裏切ってはいけないお客様との約束は守れ
権利濫用禁止の原則権限の行使が限度を超えたら認められない上司が権限を私的に悪用したら無効
比例原則目的達成のための手段は必要最小限に遅刻1回でクビにしてはいけない
平等原則合理的理由なく差別してはいけない同じミスなのにAさんだけ厳しく処分はNG
説明責任の原則行政活動を国民に説明する義務がある会社は株主に説明責任がある

信義則の重要判例

【判例】水道水源保護条例事件(最判平成16年12月24日) 特定の事業者の計画を知りながら条例を定めた市が、その事業者に対して処分をする際は、事業者の立場に配慮して十分な協議を尽くす義務がある。それに違反した処分は違法。

【判例】被爆者健康管理手当事件(最判平成19年2月6日) 国の通達に基づいて手当の支給を打ち切った後、その通達が誤りだったとして廃止された場合、地方公共団体が消滅時効を主張することは、特段の事情がない限り信義則上許されない。

信義則が認められなかった判例(重要!)

【判例】青色申告事件(最判昭和62年10月30日) 酒類販売業者が税務署長の承認を得ずに青色申告を行い、更正処分を受けた。「今まで黙認していたのに信義則違反だ」と訴えたが、最高裁は請求を棄却。

租税(税金)の分野では、法律通りに課税した処分を信義則で取り消せるのは極めて例外的な場合に限られる。

※青色申告とは:帳簿をきちんとつけることを約束して、事前に税務署長の承認を受けた人だけができる税制上有利な申告方法。承認なしに勝手に行うことはできない。

信義則のさらなる重要判例

【判例】宜野座村工場誘致事件(最判昭和56年1月27日) 沖縄県宜野座村が工場誘致の施策を変更し、企業が損害を被った。

結論:施策の変更自体は原則として許される。ただし、施策を信頼して活動に入った者が社会観念上受忍できない損害を被る場合に、やむを得ない客観的事情もなく変更することは信頼関係を不当に破壊するものとして、地方公共団体の不法行為責任が生じうる。


行政上の法律関係

国・地方公共団体と国民の間の権利義務関係を「行政上の法律関係」という。

公法と私法どちらが適用される?

原則は**公法(憲法・行政法)**が適用される。ただし場面によって私法(民法・商法)が適用されることもある。

民法177条(不動産の登記)の適用

場面民法177条の適用
滞納処分に基づく差押え適用される(最判昭和31年4月24日)
農地買収処分(旧自作農創設特別措置法)適用されない(最判昭和28年2月18日)

消滅時効のどちらが適用される?

  • 民法167条:人の生命・身体侵害の損害賠償請求権 → 20年
  • 会計法30条:国に対する金銭債権 → 5年

【判例】安全配慮義務違反事件(最判昭和50年2月25日) 自衛隊員が同僚の運転する車に轢かれて死亡。遺族が国に損害賠償を請求。

国と公務員の間にも安全配慮義務がある。そしてこの損害賠償請求権の消滅時効は会計法30条の5年ではなく、民法167条の20年が適用される。

強行法規と取締法規

目的違反した契約は?
強行法規秩序維持・弱者保護無効
取締法規違反者への罰則有効のまま

例:無免許で営業した場合、罰則は受けるが契約自体は有効。

公営住宅の使用関係

公営住宅には公営住宅法が優先して適用される。ただし公営住宅法に定めがない事項には民法・借地借家法が適用され、信頼関係の法理も適用される。


理解すべきポイント

  • 法律による行政の原理=行政は法律に従わなければならない
  • 3原則は「創造力・優位・留保」
  • 信義則は行政にも適用されるが、租税分野では極めて限定的
  • 公法が原則だが、場面によって私法も適用される

確認テスト

Q1. 法律の優位の原則とは「行政活動を行う場合には事前に法律で根拠が規定されていなければならない」とする原則である。○か×か?

× それは法律の留保の原則。法律の優位の原則とは、法律と行政活動が衝突した場合に法律が優位に立ち、違法な行政活動は無効になるとする原則。

Q2. 民法177条の規定は旧自作農創設特別措置法における農地買収処分には適用されない。○か×か?

○ 最判昭和28年2月18日。

Q3. 建築基準法63条は同条所定の建築物に限り、その建築については民法234条以降の規定の適用が排除される旨を定めたものである。○か×か?

○ 最判平成元年9月19日。

Q4. 公営住宅の使用関係については民法および借地借家法の適用はなく、信頼関係の法理の適用もない。○か×か?

× 公営住宅法に規定がない事項については民法および借地借家法が適用され、信頼関係の法理の適用もある。最判昭和59年12月13日。


🔴 絶対暗記リスト

これだけは即答できるようにする。

3原則の区別(混同注意)

原則一言で
法規創造力の原則権利義務は法律でしか作れない
優位の原則衝突したら法律が勝つ
留保の原則事前に根拠が必要

信義則の使い分け

場面信義則は?
行政一般適用される
租税分野極めて例外的にしか使えない(青色申告事件)

判例の結論

判例結論
ヨット係留杭撤去事件撤去は違法・費用支出は適法
宜野座村工場誘致事件施策変更は原則OK・信頼破壊は不法行為
青色申告事件租税では信義則はほぼ使えない

消滅時効(安全配慮義務違反)

法律時効
会計法30条5年(国への金銭債権の原則)
民法167条20年(安全配慮義務違反はこちらが適用)